このエチュード、音符が多いというだけでなく、記譜法の中にいろいろな要素が盛り込まれていて、油断ならない曲である。まず、表現記号は Andantino で8分音符=96、とここまでは何の変哲もない。メカニカルな難所も特にないが、演奏の手がかりは拍子記号の中にある。8分の3拍子。この3拍子の一拍づつに32分音符が4つ、はめこまれているのだが、これが真正の3拍子である小節と、2+1リズムになっている小節がある(例:9,13,14小節)。
 前者の多くにおいては、各拍の最初の32分音符が同時に8分音符とみなされてバーで結んで3つ組にしてあるからすぐ見分けがつく。この最初の32分音符は旋律線で、おおむねスケールでできており、スタッカートおよびアクセント記号が上下に分けてついていて、強調して一拍分響かせるべきものであることがわかるし、この動きは音形やダイナミックスとも連動している。
 細かく和音が動いていくからまったく油断も隙もない。かつ、テンポを上げたときもスタッカートとレガートの対比は明確であるべきだ。音色を変えたいな。
 後者の2+1のリズムの部分も、易しくない。これらは3拍子のリズムのフレーズの間をつなぐブリッジの部分であって、丁寧に、かつ十分に歌うべきアルペジオである。上側に4分音符のポールと8分音符・休符でリズムが指示されている。さらに続きの2小節をスケール的に演奏すべき部分もあって8分休符で指示されている。
 また、1箇所だけ、付点のついたリズムが2小節分ある(24-29小節)が、これもていねいに、かつ音楽的に演奏すべきだ。転調は、一箇所もない。提示部と再現部だけの中抜きという感じ。

 元々音符が多くて黒っぽかった譜面が、書き込みだらけでさらに真っ黒になってしまった。うーん・・・これは時間がかかるぞ。